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欧州古着の蒐集と販売についての雑感

【Special Piece】Early 20th Century “BIAUDE” FRENCH BLACK INDIGO LINEN SMOCK / アンティーク フランス インディゴ リネン スモック

 

アンティークのリネンスモックです。

フランスの古着の最高峰とも云える特別な衣服です。一時期のフランス軍のM38のようにあれよあれよと価格が上がってなかなか手が出せなくなりましたが、その稀少性と素晴らしさを考えれば当然のことにおもえます。

 

ピッチが一定で丁寧に縫われていながらもよくみると不揃いであり、すべてが手縫いであることがわかります。このような古いスモックは意匠の個体差が大きくて一枚一枚の特徴を確認するのがとてもたのしく勉強にもなりますが、こちらの個体で特筆すべきは胸当てのステッチです。ごく狭い間隔で片側12本づつの直線が縫われており、非常に手間のかかった圧巻の手仕事に惚れ惚れしてしまいます。もちろん襟や袖のギャザーも手が込んでいます。

大正期の『白樺』同人で同誌の美術評論の中核を担った柳宗悦が名もなき人びとがつくり名もなき人びとにつかわれた美しい日用品を指す概念として〈民藝〉を創出したのはちょうど百年ほど前のことですが、これら同時代のフランスの衣服も民藝的な手仕事の一典型と云えるのではないでしょうか。この直後には工場生産の既製服によって美しい手縫いの衣服が淘汰されることになるので、文化の研究に携わるものとしては史料的な価値の大きさという点からも手仕事のリネンスモックには特別な愛着があります。そしてフランスという国ではこうした年代の衣服がいまだに少なからぬ数量、それも比較的よい状態で残されているので凄いことだと感服してしまいます。

黒になるまで染められた濃いインディゴで、自然に褪色してブルーグレーのようにもみえます。19世紀の終りから20世紀の初頭にかけての非常に古いリネンの服なので生地には解れやそれにともなう小穴がわずかにあるものの大きなダメージのない綺麗なお品です。薄いシェルボタンにも割れはありません。両胸にはボタンで留められたスリットポケットがあり、両脇にはインナーやパンツにアクセスできる貫通ポケットがあります。非常に大きな存在感がありながらすぽっとかぶればそれでよいのでスタイリングもしやすいスモックです。

 

フランスの古い服の生地は、moleskine もよいけれどもやっぱり lin がいちばんだなとあらためておもいました。

 

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